(ハーレーダビッドソンのサイドカーを所有し、セカンドバイクにスポーツスターの購入を考慮している友人とのやり取りから、私の発言部分を抜粋しました)
昨日、寝る前にGooBikeでハーレーを眺めていたんだが、FXSBブレイクアウトの美しさには本当に惚れ惚れする。俺のXV1900CUレイダーのライバルだが、2008年に登場したレイダーをみて、ハーレーが「純正でこのスタイル、クオリティかよ!」と驚愕し、発奮して作ったのがブレイクアウトだとされている。リアタイヤ240mmというのは曲がらないバイクだが、ストイックなまでの美しさはハーレー随一ではないだろうか。
http://www.harley-davidson.com/ja_JP/Motorcycles/breakout.html
ハーレーは総じてシート高が低いモデルが多く、大型でシートが幅広なダイナやソフテイルにおいても、たとえ足のかかとが地面につかなかろうが、たいていは両足を同時に接地させることができる。いつでも足を地につけられるという安心感は、乗り手の精神的ハードルを大いに下げてくれる。乗ったことのないモーターサイクルの試乗では、そのあたりは不安だろうが、大いに安心していいと思う。いつでもどこでも足がつくという絶対的な安心感は、所有した後の旅先で、きわめて大きいことだと思う。サイドカーやトライク、はたまた乗用車のような物理的に「倒れない」というのもあるが、精神的な「倒れない」というのも、もはや性能の一つではないだろうか。
そうはいっても、883でも軽く250kgを超える鉄製の車体は重いと感じる瞬間もあるかもしれない。押し歩き時の重さは、ベルトドライブに由来していることも大きい。チェーンドライブのほうが軽いからだ。
スポーツスターはピーナッツタンクに限るといっても過言ではない。スタイル良し、スリムも良し。俺のスーパーローは大容量17リットルタンクで、300kmを超えてもまだまだ残りがあるが、容量が犠牲になってもピーナッツタンクがカッコいい。
883のいいところは、それこそアドレスV125と同等の利便性があるということだ。もちろん、積載性はスクーターのが上だけど、ライディングするに当たっての精神的なハードルがそれほど低いということ。毎日でも乗れる。近距離でも長距離でも苦痛にならない。
よく、ツーリングするなら1200で、と聞くんだけど、それは好みの問題。883でも長距離をゆったり走ることもできる。
つくづく思うんだけど、ハーレーダビッドソンを手に入れるということは文化を手に入れるということ。それはアメリカのものづくりの文化であり、20世紀の工業の歴史を知る、ということだと思う。だから乗らなくてもいい。見ているだけ、磨いているだけ、メッキパーツを愛でるだけで、その深淵なる世界に入っていけるんだ。
1969年のホンダCB750に代表される、日本の緻密で機能的な工業とはまた違う、骨太の耐久性という工業を見ることができる。1950年代の日本製二輪車はもう絶滅している状態だが、ハーレーダビッドソンは1940年代のものが数多く現役で走っている。883に乗ればわかるが、アルミを多用した現代のモーターサイクルとは異なる、鋼鉄の持つ絶対的な、地に足を下ろしたような安心感を感じることができると思う。
アメリカンとかクルーザーと称されるジャンルのモーターサイクルは、アップライトなポジションもあり、流れ行く風景を目に焼き付けながら走ることができる。斜め下を見て、ちょっと首を上げて走るネイキッドや、もっと前傾姿勢の強いスーパースポーツでは味わえない世界がそこにある。
ハンドルから手を離せばすぐにわかる。鬼のような直進安定性で、まったく曲がろうとしない。キャスター角が大きいので、それが小さい他のタイプのモーターサイクルにはありえない特製だ。だから曲がるときには乗り手の入力を必要とする。前輪が大きければ大きいほど、その傾向は強まる。
速く走らなくてもいい、急がなくてもいい、気持ちの赴くまま走らせればよい。疲れたら休めばいい。マイペースであることが逆に求められるのだと思う。
2007年以降はすべてのハーレーダビッドソンがインジェクション化されているから、6年落ちの2011年から現在までのモデルは信頼できて、値ごろならば一番「おいしい」と思う。リアスタイルだが、俺は逆に今のウインカー内臓テールランプは唯一無二だし、好きなんだよね。