ハーレー・ダビッドソンの2018年モデルが展示されていることを期待して、関西地区の正規代理店巡りをした。期待通りに、2018年モデルを見ること跨ることができたのだが、実物を目にして所有欲が膨らむ一方、ハーレーそのものに対するお節介なほどの杞憂が湧き上がってきたのである。
すでにアナウンスの通り、後ツインショックのダイナ・ファミリーが消滅し、いや、後一本ショックでリジッド風外観のソフテイル・ファミリーに統一されたのである。たとえば、ダイナの売れ筋No.1であるローライダーは、ソフテイルのローライダーになった。
ダイナ消滅、ソフテイル化に関しては、もちろん賛否両論があると思う。ツーリングファミリーの2017年モデルに搭載された新型エンジン、ミルウォーキーエイトを全車が搭載し、パワフルかつスムーズになったのは誰しも歓迎するかもしれなし、LEDヘッドライトやUSB電源が標準装備されたのは、多くの人に歓迎される一方で、失ったものが確実にあると思う。
それは「ハーレーらしさ」ではないだろうか。たとえば、ブレイクアウトやファットボブのヘッドライトは変形ライトになった。丸型ライトにこだわりや伝統を感じる人も多いだろう。たしかに、これからハーレーの世界に入る新しい住民には、ハーレーらしさなど必要ない。しかし、旧来のハーレーファンには胸のつかえとかわだかまりのようなものになって残ると思う。
もっともスタイルの変更がなされたモデルがファットボブである。一足先に消滅したV-RODファミリーの後釜のようなマッチョなイメージで、ドカティのDiavelやヤマハのV-maxなどともイメージが重なる。倒立サスペンションや低いシート高とフォワードコントロール、それによる深いバンク角を確保したうえでの高い運動性など、どれも従来のハーレーにはなかった性能なのである。ハーレーらしさとは、このような高い運動性にはない。つまり、ハーレーに求めるのは絶対的な性能の高さではなく、スタイルを中心にしたアメリカンらしさなのである。
こういうルックスになるともはやハーレー=アメリカンという図式はなく、某ディーラーが言うように、ハーレー=ハーレーという理解が正しい。しかし一方、カンパニーとしてハーレーユーザーのすそ野を広げ、新たなユーザー層を獲得しようという努力のたまものであることは否めない。
しかし、だ。スーパースポーツを含む他ジャンルのライダーをも取り込む努力は、果たしてハーレーダビッドソンに必要だろうか。このファットボブの写真を見た、自身はバイクに乗らない人物は、「ハーレーらしくない」と切り捨てた。時代の流れとともに変わることも必要だろうが、変えてはいけないものもあるだろう。ファットボブに代表される大変革は、そういう流れの中でのカンパニーの実験だと見てもよいかもしれない。