昨日は某病院での臨床病理カンファレンスおよび続いての臨床研修発表会に参加しました。この研修医による発表会ですが、そこで発表された症例には驚かされました。タイトルは
「CRP上昇で医大救急搬送になった妊婦の1例」
・・・みたいなものだったと思います。どう考えてもCRP上昇で救急搬送ってタイトル自体がおかしいですが。
生来健康で0経妊0経産の20代後半の女性。妊娠26週で心窩部の不快感を訴えており、血液検査では炎症反応を示すCRPが少しだけ上昇していたとのことです。ほかの検査項目はすべて正常値でした。
胸部レントゲンでは左側に微量な胸水が貯留しているのと、右の第1弓が軽度拡大している程度で、CTでも少量の胸水が確認された以外は変化はなかったとのことです。
それでもCRPは徐々に上昇し、本人は出たり収まったりする胸部の違和感みたいなものだけが自覚症状とのことでした。また、入院の少し前に転んだかして背中を打ったそうです。
で、詳しい臨床経過は忘れましたが、突然、肝臓の酵素トランスアミナーゼ、AST,ALTが4ケタまで急上昇し(ASTが2,400ぐらいでALTが1,000台)、血圧が60台に急降下し、この時点で急性妊娠性脂肪肝を疑い、医大に救急搬送となったそうなのです。
緊急帝王切開がおこなわれ、ベビーは蘇生措置を行って救命しえたようなのですが、循環器・心臓外科によるPCPS(経皮的補助心肺)がおこなわれたようですが、結局、この方は亡くなってしまったのです。
病理解剖が行われ、その結果はなんと、
・上行大動脈解離(StanfordA型解離)
・心タンポナーデ
・ショック肝(小葉中心域の肝細胞壊死)
とのこと。
いやいや、驚きました。CRP上昇ぐらいで医大搬送ってどんだけ?と思っていましたので、タイトルにだまされましたが、まさかこの妊婦さんが亡くなるとは思いませんでした。
急性大動脈解離は生来持つ血管の脆弱性が引き金になると思います。高血圧があれば解離のリスクは高まると思いますが、この方の血圧はむしろ低いようでした。
あとでCTを見直してみると、心臓の内部に血栓のようなものがあるとかないとか。いずれにせよ、腹部や産科的合併症のみならず循環器・胸部疾患を十分考えての対応が重要だったと、主治医の研修医のコメントがありました。
とても勉強になりました。