2015年8月29日土曜日

アドレスV125でプチ・ツーリング

今日は昼過ぎから、3台所有するモーターサイクルの末弟ともいえる原付二種スクーター、スズキ・アドレスV125を駆って、奈良県中西部に位置する五條市方面にプチツーリングしたので報告する。

目的は、五條市にあるバイクショップ「風の谷」に行き、白いハヤブサの実車を見ることと、先日、伊丹のバイクセブンで買った新しいブーツ、エルフのシンテーゼ15の性能を確かめたかったためである。もっとも、ギアつきバイクのように足の甲を使うことのないスクーターだから、真価はわからないだろうが。

バイク用ショートブーツ、エルフのシンテーゼ15

これはショートブーツで、生産が追いつかないほどの人気商品だという。スキーブーツを思わせるバックルが装備されているのが特徴だ。履き心地は素晴らしくよく、ライディングに必須のくるぶし周りのプロテクト性能も高いと思う。

アドレスには、今年のゴールデンウィークの四国・九州ツーリングでFZ1フェザーに搭載した、大容量46リットルのGIVI社製トップケースを装着してみた。小型スクーターに不向きとされる大柄なボックスだが、あまり違和感なく装備できた。


125ccスクーターにフルフェイスヘルメットが2個収納できる大容量ボックス(トランク)の装着。これで最強の下みちツーリングマシンの完成だ!(笑)と、ひとり悦に入り、出発となった。

ここ関西は、10月上旬並みに涼しい日が続いているとされる関東と違い、相変わらず暑い。この日の路肩の温度計は最高が31度。葛城市から五條市までは、金剛山地沿いを通る、素晴らしい田園道路。これまでこのルートでは国道しか走ったことがなかったが、それと並行する美しい道だ。

今日のランチは五條市西部にあるインド料理店ダルシャンへ。

ダルシャン Facebook ページ

ここは去年にもディナーで訪れたことがあるが、そのときは「二度と来ないかもしれない」という低い評価だった。ホールスタッフも日本人男性だけだったと思う。ところが今回は、入り口のところに祝開店という花輪が置かれており、どうやらリニューアルオープンとなったようだ。店員から調理人まですべて外国人である。


注文したのはランチメニューで最も高価!なインディアン・セット1,200円。その他のランチメニューはナンかライス、ドリンクつきで700~800円というから、激安のインド料理店である。インディアンセットにはミニサラダ、ミニライスとナンがつき、ドリンクも選べる。カレーは3種で、ポーク、チキン、ベジタブルのカレーがつく。残念なのは、それぞれのカレーは具材が異なるだけで、ベースとなるカレーの個性がないのだ。


しかしボリュームはたっぷりで、カレーの個性がないものの味は悪くない。ナンはモチモチ感がたっぷりだが、表面はカリッと焼きあがる、二律背反を具現化したようなナンだ。かなりポイントが高い。このようにコストパフォーマンスがよいランチを食べられるダルシャンは、インド料理初心者からベテランまで、万人にオススメできる店である。私の中では、これまで訪れたインド料理店の上位1/4ほどにランクインする店だと思う。

ここでの昼食を終え、目的地のバイクショップ、風の谷へ。たどり着くまで、ちょっと道に迷ったのだが、噂の通り、「こんな山奥にバイク屋があるなんて・・・」と思うほど、辺鄙な山奥に位置している。風の谷という名前のごとく、谷底の集落に位置している。四輪車では絶対にすれ違えない、獣道のような簡易舗装路を入った、谷の奥底にあるのだ。おそらく、日本一、辺鄙な場所にあるバイクショップだと思う。

バイクショップ風の谷 Facebookページ

そんな辺鄙なところにありながら、バイク在庫数が半端じゃない。おそらく300台は下らないと思う。この地のガレージも複数あり、このほかに離れたところにもあるとのことで、 恐るべき在庫数なのである。


到着したときにはお客さんがいて、店主を交えて関西弁で(当たり前だが)250ccオフロードバイク談義に花を咲かせている。店主に断って店内?ガレージ?を見せてもらったのだが、「どうぞご自由に」と言われても、所狭しと並べられたバイクの間を進むことはできないのだ。


バイクのラインナップだが、イタリアの名車ドカティが多い。さらにクモの巣が張った不動車と思しきバイクも多い。一瞬、大丈夫か?このショップは・・・と不安に駆られたのは間違いない。

店主に「白いハヤブサを見せてください」と言うと、別のガレージに案内された。そこでは、白いスズキGSX1300Rハヤブサが鎮座していた。わが国の道路交通において、おそらく速さでは右に出るものはいないであろう。路上の王者とも呼べる、究極のモーターサイクルだ。ゴールドウイングとは別の意味での究極だ。


このハヤブサは前オーナーの思い入れが強く、わざわざホワイトに塗り直したのだという。ミラーやレバー、ステップなど、いろいろなところにカスタムパーツが使われている。白いハヤブサは通称シロブサとも呼ばれ、日本を代表する名車ハヤブサをさらに代表するカラーなのである。白とはいえ、さすがに白バイはイメージしないだろう。

そして車両本体価格も驚きの二桁万円台。走行距離も2万キロにまったく届いていないし、ETCも装備されている。これは絶対お買い得だろう。またがって垂直まで起こしてみたが、重さはさほど感じない。愛車として接するユーザーともなれば、このぐらいの重量感はまったく問題にならないかもしれない。

実は、この最新型のハヤブサは、2008年に登場したとき、筑波サーキットで行われたお披露目試乗会に、私は参加していたのである。そのときの乗りやすさと、走り出してからの軽快感は、今でもしっかり覚えている。

先日までゴールドウイングだ、ハーレーだと一人騒いでいた私だが、人生は一回きりと考えれば、このようなメガ・スポーツを所有するのも悪くないと思う。かつて「人生は一回きり、だからこそ大排気量のマニュアルトランスミッション車に乗ってみたい」という理由だけで、中古のフェアレディZを乗り回していたことがある。モーターサイクルに関しても、そういう思いは同じではないのだろうか。ちなみにスズキではこのハヤブサを、アルティメット(究極の)スポーツと呼んでいるようだ。

さて、このショップでの用事は済んだので先を急ぐ。国道310号線は、これまた国道とは呼べるシロモノではない。良好な舗装をしている分、酷道という表現は避けておくが、狭いワインディングが続く峠道は、どう考えても普通の国道といった感じではない。そのためか、土曜日の昼過ぎにもかかわらず、対向車はほとんどいないのだ。これが大阪と奈良南部を結ぶ幹線道路だとは、到底考えられないのだ。

そして標高も高く、峠のトンネルの前後ではおそらく20度台前半あるいは10度台と気温はぐんぐん低くなった。寒いからくしゃみが出る、というわけで、ヘルメットの中で大きなくしゃみを50回ぐらいはしたと思う。この後の雨もあり、ツーリング後半の体感温度は一気に真夏から初冬ほどの寒さに急降下したのである。

大阪府河内長野市に降りてくる途中、突然の大雨に見舞われ、市街地でレインウェアを上から羽織ったのだが、ズボンもかなり濡れてしまっていた。その後はグローブだけが気持ち悪く水浸しになってしまったのだが、上述した新しいブーツにはまったく水の浸透がないのである。メッシュを採用したブーツであるが、蒸れることもない。かなり秀逸なライディング・ギアだろう。生産が追いつかない人気というのも納得できる。

それにしても、雨はモーターサイクルの旅を憂鬱にしてしまう。もちろん、雨でもライディングを楽しむことができるのが真のライダーという説もあり、それも理解できるのだが、雨ではヘルメットのバイザーも曇りがちとなり、少しだけ開いた状態を保とうとしても、水滴が顔にあたることになる。さすがに雨を楽しむ余裕はないのが実情だ。

そのうち、前を通ることはあっても、一度も利用したことのない道の駅にさしかかった。道の駅・近つ飛鳥の里・太子である。

道の駅 近つ飛鳥の里・太子

聖徳太子から取った地名である、ここ太子町(たいしちょう)をはじめとする大阪府南部では、ぶどうの生産が盛んな場所であることを、関西に来て初めて知った。山の斜面は見たことのない景観が広がっており、それらはすべてぶどう畑なのである。都市近郊の限られた土地で、高い付加価値を生む農産物なのだろう。


 大粒のデラウェア(写真を撮り忘れた)が550円(+税)で販売されており、買ってみた。自宅に帰って食べてみると、種はなく、皮ごと食べられ、しかも甘い。大阪産のぶどうは、このあたりではあちこちに直売所があるのだが、何回か失敗をつかまされたことがある。ここ道の駅は、さすがにハズレの産物はおいていないのだろうか、実に美味しいぶどうを味わうことができた。

竹内(たけのうち)街道を越えて自宅に近くなると、久しぶりの給油のためにガソリンスタンドに立ち寄る。ここでの燃費は36km/lを超えた。最近、燃費が20km/l台後半が続いていたが、オイル交換とタイヤ交換が功を奏した形なのであろう。



後半は雨に降られて気持ちよいとはいえないツーリングになってしまったが、奈良と大阪南部をめぐる今回の走行距離は87.1km。これだけの距離を一気に走ると、ちょっと近所にお出かけ用のスクーターでも、走った後の満足感が得られた。

通勤や買い物のための50cc原付スクーターをお持ちの皆さんにも、行ったことのない場所、走ったことのない道でのプチ・ツーリングを是非、オススメしたい。 それはきっと、アドベンチャーと呼べる旅になると思う。

109シネマズ箕面のIMAX 3Dでジュラシック・ワールドを観てきました

最近、海外アクション映画を立て続けに観ている。ターミネーター新起動/ジェニシスにがっかりし、マッドマックス怒りのデス・ロードにウーンと唸り、ミッション・インポッシブル/ローグ・ネイションにおお!と感じていたところに、スティーブン・スピルバーグ監督のジュラシック・ワールドを、全国に9つしかないIMAXシアターのひとつ、大阪府箕面市にある109シネマズ箕面で3D字幕版を観てきた。


 結論から言えば、絶対オススメだろう。ストーリーの細かい突っ込みはできるものの、スピルバーグ監督は子どもも楽しめる映画として、そういうナンセンス性を織り込み済みで作っているのだろう。



IMAXの臨場サウンドに3D映像。これは無敵である。この驚愕体験をしてしまうと、普通の2D映画は観る気にならない。それぐらい凄いものだ。


今回は、劇場中央に限定されるエグゼクティブシートで観てみた。3,000円と値段は高いものの、前席の頭が気にならない位置で、ゆったりリクライニングもできる。右側にあるテーブルには飲み物も置ける。このくつろぎ感を経験すると、次回もエグゼクティブシートを選んでしまうだろう。

2015年8月23日日曜日

ツールバッグをハーレーに装着

せっかくハーレーに乗っているので、フロントにも荷物が積めるバッグが欲しかった。容量3リットルのものが少々高かったが、容量1リットルのが100円だけ安いだけだったので、大きくて不恰好になるリスクはあったが、3リットルのものを買ってみた。

 http://www.degner-online.com/shopdetail/000000000865/ct28/page1/recommend/

鍵はかからないので防犯性はないが、ツーリング中のちょっとした小物なら入れることができる。ツールバッグという名の通り、本来は工具を入れておくべきであろうが、デジカメやめがねケースなどを入れるのに使おうと思う。

2015年8月20日木曜日

新型アルトに試乗

軽自動車が好きだ。そして日本の道路には軽自動車が良く似合う。限られた空間と660ccという限られた排気量の中で、どれだけ商品としての魅力や性能を 高められるか、ということで二輪車にも通じるものがある。その意味では、ホンダと並び二輪車と四輪車の両方を作るスズキの動向は、常に気になるところであ る。

実家すぐ近くのスズキを扱うE商会。オーナーは中学の同級生、E君。ハスラーを見せていただいた後、勧められて新型アルトの試乗に銚子市街地を一周。簡単にインプレッションを。




まず、旧モデルの丸いスタイルから一新したスクエアなボディ。これには明らかに賛否両論があるだろう。従来、セダンタイプの軽自動車は女性を主 ターゲットにしていた。このフロントのデザインはどうみても男性的な「いかつい」もので、怒っているようにも感じる。ヘッドライトの形状は正円の上部が斜 めに欠けたもので、これだけで睨まれているように感じる。ヘッドライトの間にラジエーターグリルはないに等しく、下部に位置している。おそらく社内でも相 当の議論があっただろうが、実車を見るまではこのデザインはNGだと思っていた。しかし実際に所有するつもりで眺めてみると、逆にかわいげが感じられ、これもありだと感じてきた。私の場合、拒否反応はそれほど大きくなかったということだろうか。

リアデザインは、昔のホンダZを知っている立場からすると、そのパクリかと思うスタイルだ。フラットなガラスを枠が取り囲んでいるもの。そしてちょっと疑問なのは、バンパーに埋め込んだテールランプで、商用車っぽさを感じてしまう。なにより、ぶつかるところにテールランプを埋め込むのはいかがなものか。 テールランプが下に位置することで、「でこっぱち」顔に見え、昔の日産ローレル2ドア・ハードトップを思い出してしまう。

室内はハスラーと比べると、一見すると見えるところがすべてプラスチッキーに思えてしまう。15年前にダイハツ・ミラに乗っていたが、トヨタの子会社であるダイハツはシボ加工など内装のフィニッシュが非常に上手い。それに比べて他社の内装はチープなものだった。しかし、このアルトの内装は意外と上手くまとめら れている。白と黒の大胆なコントラストの使い方は非常に秀逸。メーター周りの白も高いセンスを感じる。スポーツカー好きとしてはタコメーターが独立するなどしてほしいが、軽自動車に単眼メーターはぴったり似合う。


ヴィッツなど、前席のちょうど真ん中にメーターが来る車もあるが、アルトではドライバーのまん前にメーターを位置させるのは正統である。これはドライバーのための車、という宣言しているようなもので、運転する喜びを感じさせるからだ。

メーターの色が青や緑に変化するが、緑のときがエコ運転ができているというサインだとのこと。エコにこだわるあまり、この色を見ることがストレスになるのはマズいが、こういう機能は悪くない。シートはファブリックだろうか、触れる部分はすべて優しく感じる。男性的な外装とは裏腹に、女性的優しさを 感じる内装には高い点を与えたい。

室内の広さは実際にも広いと思う。リッタークラスと見まがうほどだ。こうなるとリッタークラスを買う意義がほとんどないんじゃないか、と思ってしまう。所有欲を満たしてくれるポイントだろう。

肝心の走りであるが、これは満点を与えてよい。私は今、ワゴンRのマツダOEM車である、2004年型のAZワゴンに乗っているが、足代わりには 軽自動車で十分だと思っているし、長距離もこれでこなせると考えている。新型アルトはさらに現代的に進化させ、よりエコ性能をアップしたものと理解され る。それを代表するのがアイドリングストップ機構である。しかも、完全にストップする直前からエンジンが停止することに驚く。条件がそろえばエンジン停止 が速度12キロ以下でなされるという。ブレーキから足を離すとトルルッと低いスターター音で自然に再始動される。非常に賢い制御がなされているようだ。

ウインカーレバーを操作すると、ピッ、ピッとの音でも合図されるが、これは悪くないし、決して商用車的でもない。ありがたい装備だ。また、ハスラーほどでないにせよ、スクエアなデザインは狭い道でも車両感覚がしっかりつかめ、女性でも安心できるポイントだろう。

まとめると、外観には賛否両論が最後までつきまとうと思う。これに尽きる。願わくば、アルト・ワークス(すでにRSというスポーティーなグレードがあるようだが)のような走りのモデルにこのデザインを利用し、女性や高齢者をターゲットに入れる他のモデルには、もうちょっと攻撃的ではない(笑)デザインを取り入れて欲しいと思う。

ただ現状でも、他者と違う個性を求めるユーザーには、オススメできる新型アルトだろう。

2015年8月16日日曜日

尊敬する、ある医師について

 本日は、私に医師としてのあり方を教えてくれた、最も尊敬する医師についてお話しします。

 医学部の5年生の時、すでに私は病理医になろうと決めていましたので、おそらく残りの人生で臨床をやることはないだろうという考えから、臨床実習中に経験 できることは何でも積極的にやろう、臨床の現場でみられることはすべて見てやろうということで、外科を回った時には時間が許す限り、あらゆる手術に立ち会 いました。

 それが評価されたのか(そんなことは絶対にない)、本当は医師法違反でしょうが特別に私だけ、手首の動脈からの採血や、外科手術の簡単な縫合もさせてもらいました。外科の先生には「お前、手術に入り過ぎだよ!」と笑いながら言われました。

 附属A病院の外科実習では、当時は当直実習という正規のカリキュラムはなかったのですが、外科の医局長に無理を言って、一晩当直に入れていただき、夜中に3件も飛び込ん できた緊急の虫垂切除術に手洗いして第2助手として入り(第1助手的にやらされました)、襲いくる睡魔のなかで外科手術をおこなうことの大変さを経験しま した。

 当時、学生が積極的に当直させてくれと申し出るのはそれまでに無く、私と、学生番号が隣の同級生のケースが初めてで話題となり、後に続く実習斑がいたとい うことです。そのためか、外科の医局長が築地から生牡蠣をバケツいっぱい取り寄せてくれ、私たちに振舞ってくれました。生まれて初めて生牡蠣を食べたのが、このA病院外科医局だったのです。

 その先生との出会いは医学部5年生の臨床実習の当直の時です。私の大学は当時、初の本格的な救急部門を新たに開院した附属B病院に作り、私の学年からB病院での当直実習が始まりました。

 夜7時に高度意識障害を主訴に、救急部(ER)に60代女性が運ばれてきました。ポケベルで呼び出された私たちを迎え、丁寧に指導してくれたのが、当日の内科当直医で、当時30代前半、新進気鋭の神経内科医、N先生でした。

 このときのことは今でも昨日のように鮮明に覚えています。

 患者さんは深昏睡の状態で自発呼吸は弱く、左右の瞳孔がピンホールのように小さくなったままで(縮瞳)、重篤な脳幹出血が疑われました。すべてが初めて経験することで、おろおろしている私たち学生に、脳卒中急性期に手早くどう診察すべきか、病態の把握と治療の両立、現場でなにができるか等々、丁寧に教えてくださいました。

 バビンスキ反射など病的反射の出現や深部腱反射の亢進など、神経所見の取り方・みかた、気道を確保するための舌根沈下防止のためにあごを持ち上げるJaw-up等々、授業や教科書でしか知らない初期治療の実際を手ほどきしてくださいました。

 この病的反射が出ているのを確認しながら一瞬、漫画ゴルゴ13を思い出してしまいました。旧ソ連ではバビンスキ反射が出て拷問を止めているシーンを思い出したからです。ただちに、脳圧を下げるための薬が点滴で行われました。

 その直後、キザなアラフォー部長を筆頭とした脳神経外科医も大挙してERにやってきたのですが、

 「おらおら学生!もっと強くあごを挙げろ! 
  こ・う・す・る・ん・だ・よ!!」

と、私の手を痛いほど握ってえばり腐って指導するのです。すでに酒を飲んでいるかのような悪態ぶりでした。

 その後速やかに気管挿管され、皆でストレッチャーを放射線室に運んでCTを撮りました。 脳幹(橋)の中央に白く光る出血が確認され、その脳外科部長はこう言い放ちました。

 「あーやっぱり脳幹出血だ! ハイ、手術適応なし!
  脳外科の出番はありませーん。おーいみんな!飲みに行くぞ!」

 その場に私たち学生とN先生が取り残され、その後ICU管理となるまでの急性期を見守ったのです。私はN先生を通して、いま命のともしびが消えるかもしれない患者さんに真摯に向き合う、 あるべき臨床医の姿を見ることができました。

 私が医師となって7年目、ちょうど専門医を取得した直後にB病院に転勤となり、再びN先生と今度は医師同士としてお付き合いすることになりました。 仕事を通じての付き合いはもとより、病院のコンピューターシステムをどうするか一緒に検討したりと、いろいろお世話になりました。

 優れた臨床医として皆に尊敬され、常に謙虚な「学習者」としてのあり方を私に見せてくれたのもN先生です。

 なお、私がいた当時のK病院総合内科は、一般、神経、感染症、血液、循環器、消化器・肝臓、呼吸器、糖尿病・代謝内分泌、腎臓など、専門家の集合体でした が、外来においては初診から専門まで、教授から研修医まであらゆる疾患を全員が分担しておりました。病院開院当初から、N先生は 総合内科の立ち上げの中心メンバーとして活躍されました。(現在では専門分化し、総合診療部門がなんでも内科の役割をしているようですが)

 また、臨床医であっても技術があれば病理解剖ができる、ということを示してくれたのもN先生です。先生は「他部署の手をわずらわしたくない」ということで、なんと!病理検査室に何の連絡もないまま、夜中にお一人で開頭を含めた全身の解剖をされました。

 器具が綺麗に片づけられて清掃された解剖室をみて、「誰か夜中に解剖やった?」と確認したところ、先生がお一人で解剖をやった後だったとわかった時、病理スタッフ一同、言葉を失いました。先生は某国立大学の神経内科に国内留学された時、病理解剖を学んだとのことでした。

 ある日、最寄の駅から歩く道すがら、最近元気がないN先生に私の上司が、 「N君、最近顔色悪いけど、どうしたの?」と問いかけると、「最近、ぜんぜん疲れが抜けないんです」との答えが帰ってきたそうです。

 その後、先生の姿は病院から消え、内科にいた私の同級生から「おそらく職場復帰することができない病気」で附属病院本院に入院したという話を聞きました。 その真実を知った時に私はショックでしばらく仕事も手につかなくなるほどでした。レントゲンで見つけにくい、右の肺門に発生した小さな腺癌でした。

 闘病期間は5ヶ月。死因は肺がん(低分化型腺癌)・脳転移、享年45でした。

 私の同僚が先生の病理解剖を担当しました。誰からも慕われる先生の早すぎる死に、多くの同僚、職員が涙しました。お通夜は先生のお生まれになった東京下町にある斎場で行われ、大勢の列席者の後、一番最後のほうに焼香した私は初めてお会いする奥様にお悔やみの言葉をかけました。泣き疲れて憔悴しきった奥様は、ぜひ聞いて欲しいという感じでお話くださいました。入院して最期のほうで、毎日のように、

 「僕は神経の医者だから、脳に転移したがんだけは絶対に治してみせるから」

と、うわごとのように言っていたとうかがいました。

 もちろん、それは叶わないことだとわかりますし、脳転移が正常な神経伝達を阻害した結果と理解できますが、臨床医としての執念を思わせ、私はあふれる涙を抑えられませんでした。いまでもN先生のことを思い出すだけで涙が出ます。この文章を書くのも一苦労です。

 N先生は個人の医師会員ではありませんでしたが、医師会主催の勉強会で講師を何度もお務めになったこともあり、特別に地域の医療に貢献したということで、亡くなった後、地域の医師会から特別な賞を授与されたそうです。

 ずいぶん後に、肺がんと診断された最初の経気管支的肺生検(TBLB)で採取された組織を顕微鏡で観て、少数の癌細胞が出現しているのを確認しましたが、 現在に至るまで、解剖での先生の臓器プレパラートを検鏡していません。観たいという気持ちはありますが、先生の体の中を覗きみてよいほど、私は先生に追い ついていないと思ったからです。でもそのうち、先生の病理組織を拝見させていただこうと思っています。

  今なら非喫煙者の肺腺癌はイレッサやタルセバなど、分子標的治療薬である程度、生存期間を伸ばすことができるかもしれませんが、90年代はドセタキセルなど新規抗がん剤は出てきてはいましたが、有効な薬物治療はありませんでした。

 ほんとうに善い人は早死にするということが理解できました。密度の濃い人生を一気に駆け抜けるからでしょう。早世した方々は、残された人たちに与える影響 も大きく、死後ますます尊敬の念が高まります。私は早死にしたくないので、「憎まれっ子世にはばかる」を実践したいのですが、死んだ後に私を想って誰か泣 いてくれる人がいればよいと思っています。

 私はとうにN先生が亡くなった年齢を超えていますが、いったい毎日、何をやっているのでしょう。日々の仕事を片づけるのに精いっぱいで上昇志向もなく、ほんとうに恥ずかしくなります。

 世間では、自分本位で、まともに話ができなかったり、互いの接点を見出す努力のかけらも見えないという、相手の気持ちを考えられない、人間を相手にする医師としてあってはならない医師がいます。医師である前に人であることができない医師がたくさん存在するのです。そんな医師に対し、N先生の爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいです。

 N先生、もう一度先生にお会いしたいです。

 この文章を天国のN先生に捧げます。

十津川から龍神へ 日帰りツーリング

 久しぶりに愛車ヤマハFZ1フェザーで自然の中へのソロ・ツーリングを敢行したのでレポートする。


一つ前の記事に書いたように、ホンダ・ゴールドウイングに執心中の筆者だが、やはり軽量なモーターサイクルの使い勝手をいま一度確認すべく、愛車ヤマハFZ1フェザーを駆って、今年初めてとなる十津川へのツーリングを敢行した。この日も気温は30℃以上が予想され、おまけに五條市で吉野川の花火大会があるため渋滞も予想され、ツーリングに出かけるには少々悪い日程であった。

 五條市大塔(おおとう)の道の駅、吉野路大塔で休憩した後、谷瀬の吊り橋をトンネルで素通りして道の駅十津川 郷へ。この間、そこそこのペースで走ったのだが、およそ50分。十津川村が村としては日本で一番面積が広いことを実感する。この先の酷!道425号線も合わせると、実に広大な自治体であることが分かる。

 上の写真は道の駅十津川郷でのショット。ゴールドウイングと異なり、ジャケットやヘルメットを収納するスペースがないので、ごらんのような有様だ。


 ここ十津川郷を訪れたのは去年に続き2回目なのだが、2回にそば処があるのを知らなかった。あまり食欲はなかったのだが、 ライディングはものすごくエネルギーを使うので、大盛のざるそばを注文してみた。

 麺には適度なコシがあり、食べ応えはある。ただ残念なのが、わさびを入れすぎてしまったこと。それで味もすっかり分からずに、辛さとの格闘になってしまったことを申し述べておきたい。


 道の駅・十津川郷で、国道425号線が通行止めになっているというパンフレットがあり、店員に確認してみたところ、今は解除となって通れるという。しかし平日には定期的に工事のために閉鎖することがあり、地元にはそのスケジュールが知らされているようだ。

 国道425号線は、上の写真のあたりは道幅が広いものの、多くの区間で対向車とすれ違うのが極めて困難だ。カーブミラーも少なく、昼間は夜と違ってヘッドライトで対向車の接近を確認することができないため、カーブの向こうが見通せないところでは、対向車が来ないのを願わざるを得ないのだ。これはもはや運だけの道なのである。

 そして通行止めにして工事をする理由が、ところどころ路肩が崩壊しており、普通車での走行はきわめて危険な箇所があるということだ。アスファルトの一部が10cmから30cmぐらい、谷側で崩れているのだ。

 なおかつ、ガードレールがなく危険な箇所が多い。しかも転落したら死は免れない箇所が多いのだ。途中、谷瀬の吊り橋ほどではないが、こんな吊り橋を見つけた。渡ろうと思ったら、木は腐食し、足をかけたとたんに橋がギシギシと音を立てて揺れる。命が惜しいので、数メートル行っただけで引き返してしまった。


 人里はなれた、というのはこういう場所のことを指すのだろう。見渡す限り、山山山。関西の山は標高こそ高くないが、突然遭遇する急峻な谷に驚く。写真はないが、和歌山県橋本市や五條市には、地元の人しか知らない渓谷が連なり、その深さに驚いてしまった。


 道の駅龍神。ここではレトルトカレー3種を買う。今回はリアシートに取り付けた小さなバッグしか収納スペースがないため、お土産はこれで勘弁を、というわけだ。まぁ、このバッグの容積、もうちょっと増やせるんだけど。


 最後に立ち寄ったのは、高野龍神スカイライン、護摩壇山にある道の駅ごまさんスカイタワーである。標高が1000mほどで、涼しい風が吹いている。ここは関西ライダーの聖地的場所であり、多くのライダーが集まっていた。


 ごまさんスカイタワーからは3時間弱の帰途。途中、国道371号線を橋本市まで走ったが、こちらも国道425号線ほどではないにせよ、酷道であった。先にも述べたように、山深い細道に渓谷のおりなす山岳美が素晴らしい。全国にあるであろう、国道なのに酷い道をめぐってみたくなった。

 一日FZ1フェザーに乗り、そこかしこに軽さのメリットを感じることができた。ちょっとした坂であれば、力を入れて取り回しができるが、ゴールドウイングではそうはいかない。またがった状態でリバースに入れなければならないからだ。

 また、ノーマルよりハンドルを2cm近く上げているが、これが絶妙な居住性の高さにつながっている。肩に力が入ることなく、3時間近く連続して走ったとしても、手がしびれるなどの不快な後遺症?に悩まされることはない。

☆本日の走行距離: 244.9km

 

2015年8月5日水曜日

ホンダ・ゴールドウイング GL1800 レポート

 このブログをご覧の方はご承知の通り、最近、筆者はCan-Am Spyder という普通免許で運転できる三輪車にもっぱら興味津々だった。しかし、ふと冷静になって考えてみると、人生の半ばをとうに超え、究極のモーターサイクルに乗らずして死ねるか、という命題に答えを出さなければならない時が来たように思われる。そう、もうそろそろ「終の棲家」ならぬ「終のバイク」を考えなくてはならないのだ。それは、究極の一台ということになる。

 究極のモーターサイクルと言えば、ホンダ・ゴールドウイング GL1800 をおいて他にない。おそらくそれは異論を待たないであろう。もちろん、速さの究極、手軽さの究極、価格の究極などというものもあるだろうから、ひとえに究極と言ってもひとつではない。

 では、ゴールドウイングは何の究極だろうか。私は思う、モーターサイクルでありモーターサイクルでない究極だ、と。このことは、この後、実際に運転してみて、真っ先に感じることになるのだが、乗り始めるまでの精神的なプレッシャーは半端なものではない。あの巨艦を相手に、身長165cmの私が太刀打ちできるのか、そればかりが気になる。たちゴケのことを考えると、恐怖心しか感じない。

 実は過去に一度だけ、横浜市旭区のホンダ・ドリームで、タンデム(2人乗り)で短い試乗させてもらったことがある。このときは、重さをそれほど感じなかったが、終始緊張しっぱなしだったので、ゴールドウイングを楽しめたという記憶がない。そこで、もうすこしゴールドウイングを知るべきと思い、最高気温が37度と予想される暑い8月1日、ゴールドウイングをレンタルするために、京都に向かった。善は急げ、チャンスを逃すと二度と来ないかも知れないので。



 ホンダ二輪車のディーラーであるホンダ・ドリーム京都東にて、この、ライダーの憧れであり、究極のモーターサイクルである、ゴールドウイングGL1800 をレンタルした。この店舗は全国チェーンのレンタルバイクショップを兼ねており、保険込みで4時間2万円強は「授業料」としては高いが、将来の具体的購入候補と考えると、ひと時でも乗って体験しておかなければならないの である。


 レンタルバイクは店内に置かれていた。威風堂々とした外観は、見るものを圧倒する。二輪車に興味のない人から見れば、「なんだあれは?となるかもしれない。今回、4時間ほどをゴールドウイングを過ごすことができたので、インプレッションもかねてレポートする。


 まず、必要事項を用紙に記入し、料金を保険料とともにカード払いとした。その後、試乗開始前に店員から基本的な操作法のレクチャーを、クーラーの効いた店内で受けた。 トップケースとサイドケースの開け方、閉め方は、リアランプ上の3つのレバーを引くことで可能となる。特に問題ないのだが、ゴールドウイングの後方は、ややゴチャゴチャしている印象を受け、レバーの位置を間違いやすく、テールランプの下をいじってしまうことがあった。このマシンの表面積は広いのである。


 この日の京都の最高気温は37度。灼熱の市街地にむけてゴールドウイングで滑り出した。・・・と、こう書くと格好いいのだが、実は相当にビビッていた。少しだけ段差のある歩道から目の前に出ることが、なんとも勇気のいることか。クラッチのタイミングは分かったが、アクセルをどれだけ開けてクラッチをつなげばよいのか、その加減が分からないのだ。店員2人に見送られ、何とか最初の「儀式」はクリアできた。

 そして店の前にある信号を右折する。こういった何気ない動作に怖気づいてしまうのだが、ひとつひとつクリアできると自信につながる。そうだ、自分より小柄な高齢者(失礼)も乗っているではないか。乗りこなすには程遠いにせよ、とにかく「乗れる」自信を持ちたいものだ。京都市山科区、国道1号に右折して大津方面に向かう。その頃にはすでにゴールドウイングの虜になっている自分に気がつく。


 走り出したとたんに気づいたのだが、この極めて上質なエンジンはいったい何?という印象を持つ。二輪車のエンジンとは思えないほど、そのサウンドやアクセルワークへの追従性が「豊か」なのだ。つまり、有り余るエネルギーが豊富にあり、それを初めて操るライダーが程よく調教できるエンジン、と言ったらよいだろうか、要は完成された極上のエンジンなのだ。

 この水平対向6気筒エンジンは、まさにシルキーと呼ぶべきすべるような、一切の抵抗を感じさせない滑らかな回転を示す。そのサウンドも上質。そして、空気ばねかと錯覚するほど乗り心地は快適だ。いずれも下手 な四輪車より美しい世界がそこにある。それにしても、オーディオ(今回はFM放送)を聞きながらバイクを運転するのは初めてだったし、オートクルーズ付き のバイクに乗るのも初めて。これはもはやオートバイではなく「高級な何か」なのだ。

 このあたりはライバルと目されるBMW K1600GTLに乗って比較してみたいものだ。なにせあちらはBMW。元祖シルキー6であり、ぜひとも比較してみたい。


走行中の印象を少し述べることにする。まず、大型のシールドとフェアリングのおかげで、体に風はほとんどあたらない。灼熱の中でも、走れば不思議なことに結構涼しく感じる。エンジンの廃熱も下半身を襲わない。だからクーラーのないクルマ、とも呼べる。しかし、乗る人の心を豊かにしてくれる性能は、こちらのほうが何枚も上手であろう。



 琵琶湖の西、対面通行の高速道路といった国道161号を高島市に向けて北上する。ここはカーブの少ない、ときどき琵琶湖が眼に飛び込むゴキゲンな快走路だ。途中、渋滞に遭遇するが、さて困った。こんな巨体ですりぬけができるのか?という最大?の問題がある。危険なすり抜けはしないに越したことがないし、ましてレンタルバイクだ。万が一のことがあったら、金銭的なことはもとより、精神的にもダメージを追ってしまう。しかし目前の渋滞は解消しそうにない。そこで思い切って、他の二輪車に続いてすり抜けをしてみた。これがなんと、あまり苦もなくできるのである。全幅は94cmと、たとえばZX-14とかに両サイドのパニア・ケースを付けた場合よりも狭いのである。最初から取り外し不可能なサイドケースが装備されているゴールドウイングでは、オプションでパニアを取り付けた場合よりも狭いのだ。

 また、低速の安定度たるや鬼のようだ。歩くようなスピードでも慣れればドンッ!と構えていられる。案外と一本橋は得意なのかもしれない。などと考えているうちに、だいぶ慣れてきた自分に気がつく。


 走行性能に関しては、もはや文句のつけようがない。今回はワインディングでの試乗ができなかったので、そのインプレッションは他に譲るが、いざというときに必要なパワーは必要なだけ引き出せるといった印象が強い。そのため、スーパースポーツとのマス・ツーリングでも、後れをとることなくペースについていくことが出来ると思う。なにせ、乗車姿勢が楽なのがありがたい。今回の4時間のレンタル中、体のどこかが痛くなる経験は皆無であったことを強調したい。

 さて、ゴールドウイングGL1800を語る上で欠かせないのが、高い利便性である。そのなかでも標準装備されたトランクは、タンデムでの1週間に及ぶツーリングに十分な積載性を与えてくれそうだ。フルフェイスヘルメットが2個収納できるトップケースと左右のサイドケース。いずれもダンパーを装備して、クルマのトランクのように優しく開閉する。米国製だったGL1800では、これらのケース内には絨毯が敷かれていたが、ビッグマイナーチェンジを受けて熊本工場製になった現行モデルでは装備されない。この点がやや残念である。

 ETC本体は左サイドケースに収納される。なお、イグニッション・キーとトランクのキーは連動していないようで、キーのリモコン動作でロックされるようだ。とにかく、このトランク、使い勝手は非常に良い。


 今回はハンドルポストやフェアリングに装備されたすべてのスイッチを使うことはできなかったが、オーディオと並んで特筆すべき機能がオートクルーズである。所有する四輪車にも装備されており、一度その便利さを知ってしまうと、手放せなくなる。それが二輪に装備されているとは、いったいどういうものなのだろう。ヤマハFJR1300Aにも装備されており、FJRに乗る知人が「いやー、これが一番便利な装備」と太鼓判を押していたが、実際の使用感はどうなのか、とても気になっていた。

 レンタルに当たっては、 オートクルーズの説明まで受けていない。停車したときにスイッチ類をじっくり観察しなかったので、走行中に眼に入ってくるスイッチの文字が手がかりだ。右手にオートクルーズのスイッチを3つ発見する(下写真)。うち押しボタンはこの機能のON/OFFスイッチらしい。まず、これをONにする。そしてSETとかかれたボタンを押すと、一瞬のタイムラグの後にぐっと体が後方にのけぞる感じと同時に、その速度が維持される。

 慣れれば問題がないが、オートクルーズをセットした瞬間の不快感がある。これはいただけない。ただし、設定速度のアップやダウンは難なくできたし、この機能自体に問題はなく便利だ。セット時の不快感も、そういうものだと知っていれば問題にならないだろう。ただし、最後までキャンセルスイッチを見つけることはできなかった。ブレーキ操作でキャンセルになるのは知っているから、これも特段の問題ではないのだが、気になるところ。操作系はできるだけ単純なほうが良いという二輪車のセオリーに従い、余計なスイッチをつけることでライダーの混乱を避けるという、いわば親心なのであろうか。


 ゴールドウイングにマイナスポイントを見つけるのは難しい。もちろん、重さ - はマイナスだが、それが安定性につながるのであれば、必ずしもマイナスではない。しかし、高級なソファを思わせる安楽なシートには不安要素がある。それは、走行中はシートの後方にどっかりと尻を据えて座っていれば良いのだが、信号待ちなど足を付くときには前方に腰をずらさなければ、地に足が届かないのだ。長身であっても、シート両脇のクッションが邪魔になり、足つき性をスポイルしていると思う。これもゴールドウイングならではの作法と考えられなくもないが、停車をあらかじめ意識していないとあわてることになるだろう。


 まだまだ書きたいことはたくさんあるのだが、第一回はこれぐらいにしておきたいと思う。足りないところは、次回のレンタル時にあわせて報告してみたい。まとめると、ゴールドウイングは「買い」であるということ。それも体力のあるうちに所有しておくべきなのではないか、と個人的に思ったりしたということである。

2016.11.1 動画を追加しておく