2015年8月20日木曜日

新型アルトに試乗

軽自動車が好きだ。そして日本の道路には軽自動車が良く似合う。限られた空間と660ccという限られた排気量の中で、どれだけ商品としての魅力や性能を 高められるか、ということで二輪車にも通じるものがある。その意味では、ホンダと並び二輪車と四輪車の両方を作るスズキの動向は、常に気になるところであ る。

実家すぐ近くのスズキを扱うE商会。オーナーは中学の同級生、E君。ハスラーを見せていただいた後、勧められて新型アルトの試乗に銚子市街地を一周。簡単にインプレッションを。




まず、旧モデルの丸いスタイルから一新したスクエアなボディ。これには明らかに賛否両論があるだろう。従来、セダンタイプの軽自動車は女性を主 ターゲットにしていた。このフロントのデザインはどうみても男性的な「いかつい」もので、怒っているようにも感じる。ヘッドライトの形状は正円の上部が斜 めに欠けたもので、これだけで睨まれているように感じる。ヘッドライトの間にラジエーターグリルはないに等しく、下部に位置している。おそらく社内でも相 当の議論があっただろうが、実車を見るまではこのデザインはNGだと思っていた。しかし実際に所有するつもりで眺めてみると、逆にかわいげが感じられ、これもありだと感じてきた。私の場合、拒否反応はそれほど大きくなかったということだろうか。

リアデザインは、昔のホンダZを知っている立場からすると、そのパクリかと思うスタイルだ。フラットなガラスを枠が取り囲んでいるもの。そしてちょっと疑問なのは、バンパーに埋め込んだテールランプで、商用車っぽさを感じてしまう。なにより、ぶつかるところにテールランプを埋め込むのはいかがなものか。 テールランプが下に位置することで、「でこっぱち」顔に見え、昔の日産ローレル2ドア・ハードトップを思い出してしまう。

室内はハスラーと比べると、一見すると見えるところがすべてプラスチッキーに思えてしまう。15年前にダイハツ・ミラに乗っていたが、トヨタの子会社であるダイハツはシボ加工など内装のフィニッシュが非常に上手い。それに比べて他社の内装はチープなものだった。しかし、このアルトの内装は意外と上手くまとめら れている。白と黒の大胆なコントラストの使い方は非常に秀逸。メーター周りの白も高いセンスを感じる。スポーツカー好きとしてはタコメーターが独立するなどしてほしいが、軽自動車に単眼メーターはぴったり似合う。


ヴィッツなど、前席のちょうど真ん中にメーターが来る車もあるが、アルトではドライバーのまん前にメーターを位置させるのは正統である。これはドライバーのための車、という宣言しているようなもので、運転する喜びを感じさせるからだ。

メーターの色が青や緑に変化するが、緑のときがエコ運転ができているというサインだとのこと。エコにこだわるあまり、この色を見ることがストレスになるのはマズいが、こういう機能は悪くない。シートはファブリックだろうか、触れる部分はすべて優しく感じる。男性的な外装とは裏腹に、女性的優しさを 感じる内装には高い点を与えたい。

室内の広さは実際にも広いと思う。リッタークラスと見まがうほどだ。こうなるとリッタークラスを買う意義がほとんどないんじゃないか、と思ってしまう。所有欲を満たしてくれるポイントだろう。

肝心の走りであるが、これは満点を与えてよい。私は今、ワゴンRのマツダOEM車である、2004年型のAZワゴンに乗っているが、足代わりには 軽自動車で十分だと思っているし、長距離もこれでこなせると考えている。新型アルトはさらに現代的に進化させ、よりエコ性能をアップしたものと理解され る。それを代表するのがアイドリングストップ機構である。しかも、完全にストップする直前からエンジンが停止することに驚く。条件がそろえばエンジン停止 が速度12キロ以下でなされるという。ブレーキから足を離すとトルルッと低いスターター音で自然に再始動される。非常に賢い制御がなされているようだ。

ウインカーレバーを操作すると、ピッ、ピッとの音でも合図されるが、これは悪くないし、決して商用車的でもない。ありがたい装備だ。また、ハスラーほどでないにせよ、スクエアなデザインは狭い道でも車両感覚がしっかりつかめ、女性でも安心できるポイントだろう。

まとめると、外観には賛否両論が最後までつきまとうと思う。これに尽きる。願わくば、アルト・ワークス(すでにRSというスポーティーなグレードがあるようだが)のような走りのモデルにこのデザインを利用し、女性や高齢者をターゲットに入れる他のモデルには、もうちょっと攻撃的ではない(笑)デザインを取り入れて欲しいと思う。

ただ現状でも、他者と違う個性を求めるユーザーには、オススメできる新型アルトだろう。