2015年9月8日火曜日

ハーレーを駆って竹田城跡へ

長文を失礼する。この6月にハーレーダビッドソンの最小モデル(750cc除く)XL883Lスーパーローを大阪の松屋町バイク街で衝動買いしてから、足つき性はじめとする乗りやすさと、毎回の新しい発見に驚かされているるものの、いまだ本格的なツーリングに出かけたことはなかった。秋の気配をわずかに感じるようになった昨今、この「とてもフレンドリーなオートバイ」を駆って、フラっとどこかに出かけてみたくなったのだが、今回の週末はたまたま、一人で1泊で出かけるチャンスに恵まれた。そしてまた、ハーレーでいまだ本格動画撮影がないことから、今年初めてアクションカメラの王道GoProを持ち出し、ハンドルにカメラ2台付けでスタンバイした。


目的は兵庫県朝来市和田山町にある竹田城跡(城址)。ここは最近、「日本のマチュピチュ」というキャッチフレーズでもてはやされ、朝方の雲海に浮かぶその姿は「天空の城」と呼ばれ、全国から観光客が訪れているという。



土曜日の天気は雲がやや多いものの基本的には良く晴れていて、気温は30度近くまで上昇した。今回のルートは高速道路での移動と観光地長時間滞在型とした。実は当初、125ccのスクーター、アドレスV125にする予定だったのだが、これは止めて大正解だった。125ccでは高速道路を走れないので、ここまで200km近い移動だけで時間を費やしてしまい、目的地をじっくり散策することができなくなるからだ。
阪神高速を経て池田インターから中国自動車道へ。吉川ジャンクションから舞鶴若狭自動車道へ入り、北に進路を変える。さらに春日ジャンクションから北近畿豊岡自動車道へ。吉川ジャンクション以遠は初めてだ。北近畿豊岡自動車道は「高規格道路」という分類になるのだろうか、いわば無料の高速道路だ。多くの区間が片側一車線の対面通行だが、ところどころに追い越しゾーンがある。自動車専用道路であり、125cc以下の自動二輪車は通行できない。氷上パーキングエリアで昼過ぎに小休止。気温はこの時点で29度ぐらいと暑い。さらに、朝から何も食べていない。



兵庫県北部を訪れたのは10年以上前、城之崎温泉を関東からはるばる軽自動車で訪れて以来となる。今でこそ高速道路が伸びて、より気軽に行けるようになったエリアだと思うが、目に飛び込んでくる自然の雄大さは関東地方にはないスケールだと思う。自然の雄大さといえば、もちろん北海道や海外の雄大さとは比べられないが、人工的なものと自然のコントラストがしっかりしているというか、自然はあくまで自然のままに存在しているかのようだ。もっとも関東は平野が中心なので、群馬などを除けば山間部に高速道路はほとんど伸びていない、という見た目の違いもあるかもしれない。これは兵庫からさらに西に連なる中国地方の山間部にも言える。植林が少ないことも関係しているかもしれない。田畑も高くない山々も、どこか本来の自然の力がみなぎっているように思う。この風景の持つスケール感はゴルフ場や宅地開発が虫食い状に目に付く関東地方の郊外では感じることが出来ないものだ。兵庫県の山々など、関東の人間にはまったく知識がないが、ありのままに近い風景にどこか安堵を覚える。



北近畿豊岡自動車道をさらに進むとトンネル区間だけ有料になる。ETCを搭載しているので止まる事はない。春日インターからここまでは丹波市、その次が朝来市になる。兵庫県北部は平成の市町村合併が進み、新しい市が多い。これらの市はいずれも千葉県で最大の面積の市原市より広い。今日の宿泊地は豊岡市なのだが、平成の合併で旧・豊岡市に城崎町、出石町、但東町、日高町、竹野町を合併し、東京23区を上回る面積の市になってしまったようだ。

さて、和田山インターを下りて一般道へ。ここが朝来市和田山町。和田山町というのは合併前の自治体名である。天空の城はすぐそこに見える。あらかじめYouTubeでルートを予習していったのだが、巨大なアーチ橋をくぐると、もうすぐ目的地となる。このアーチが播但連絡道路だ。こちらは有料。

竹田城跡では、竹田山の中腹にある「山城の郷」という道の駅のような施設が公式駐車場になっている。本日は満車のために、四輪車はこの手前、ふもとにある臨時駐車場に案内されていたが、二輪車ならば山城の郷まで行くことができる。しかし、ここから竹田城跡の正門までは、まだ2kmほどあるのだ。そういう基礎知識のない個人客も多いと思われるが、そのあたりの表示が実に不案内なのである。ドライバーが一瞬にして認識できるよう、一つで良いので導入路に竹田城跡までをは山城の郷駐車場から徒歩なら何分、シャトルバスあり、ということを明示して欲しいものだ。もはや全国区となった観光名所である。行き方まで内緒にする必要はないし、観光客も体力に合わせて徒歩とバス、あるいはタクシーを利用できると思うのだ。高齢の観光客も多く、どうしても気になるところだ。



13時過ぎに山城の郷に到着して土産物店を見るまでもなく、体力温存もあり、早々にシャトルバスに乗り込んだ。料金は片道150円で、幸いなことにちょうど客が少ない時間帯であった。観光バスで来た客もシャトルバスに乗ることになる。この後の時間帯は観光客ラッシュであり、3,4台のシャトルバスが一気に臨時運行されていたようだ。


数分で城跡近くの駐車場に到着した。ここから正門までは、なんと800mも舗装路を歩かなければならない。100mほどいった所にある売店と駐車場からは、城跡西側に登る急峻な遊歩道があると思ったが、これは立ち入り禁止らしい。いわゆる、「亀さんコース」と呼ばれる歩行者専用の歩道を歩かなければならない。


あと何100mという標識こそあるが、高齢者には厳しい道のりだと思う。どうせなら、この間に人力車を運行するようなアイデアはないのだろうか。勾配もあり難しいかもしれないが、高齢者2人で片道1,000円ぐらいなら客はつくだろう。
10分ほど歩いて正門に到着。入場料は500円である。あらかじめ300円と聞いていたが、土日料金だからであろうか。旧跡に500円というのは妥当かどうかクエスチョンだが、ここまでバスを使っていることもあり、せいぜい300円にして欲しいと思った。


城跡の最初のエリアが北側に位置する北千畳郭。この入口にガイド兼係員が立っているのだが、観光客が到着する度に「ここが北千畳郭です。園内は一方通行になっており、ここには戻ってこられません」と大声で言っている。ここでしか見ることのできない眼下の景色もあるので、「その端まで行って、写真を撮ってください」とも言っている。





案内をしてくれるのはうれしいのだが、「戻ってこられない」というのはプレッシャーだ。熊本城や松本城の城内が一方通行というのは聞いたことがない。たしかに竹田城跡は細長い全体像であり、全体を一本の道が貫いていることから、一方通行にすれば管理しやすいというのは理解できる。しかし道は決して狭くなく、一方通行にする理由が不十分なのだ。めまぐるしく天候や光線が変わる可能性もあり、「もう一度あの場所で撮影したい」という観光客もいることだろう。なんとかならないだろうか。





そして、城跡保護のために、転んでも怪我をしない柔らかいクッション性の物質で歩道全体を覆うのは悪くないが、やや大げさに柵が作られている箇所もあり、自然な景観を損ねている印象があった。これは転落防止のために、仕方がないことかもしれないが。また、自動販売機並みに映えるAEDのボックスが随所にあるのは、どうにかならないかとも思われたが、それは現代の観光地、仕方のないものなのだろう。

城跡全体を普通に見ると、せいぜい15分~20分で見終わってしまう。正門とは別の通路を使って、最初に歩いてきた舗装路に出るのだが、どう考えても「これで500円」は納得できない。おそらく、一日中解説を交えながら案内している係員の人件費に消えていくのだろうと思うが、いかがだろう。法隆寺など無料のボランティアガイドが大勢いるのだが、竹田城跡は観光地になって日が浅く、広く深く解説できるだけのボランティアガイドが育成されていないのであろう。






また、大々的に「日本のマチュピチュ」と呼ぶのはいかがなものか。いやなに、別にそう呼んでもかまわないのだが、あまり強調しすぎるのは歴史からみて、いかがなものだろう。石壁の向こうに山がそびえる景色が似ているとのことだが、マチュピチュはインカ帝国の都市であるのに対し、こちらは城砦。兵士は普段はふもとにいて、戦のときに昇ってくる城とのこと。ひっそり「日本のマチュピチュとも呼ばれています」ぐらいに控えめにしておいたほうが、世界遺産に対する謙遜みたいな感じでいいと思う。






ということで、他にも気になった点はあるのだが、この辺にしておこう。何はともあれ一回訪れただけでは、その真価みたいなものはわからないと思う。晩秋に再び訪れ、ぜひとも雲海に浮かぶ城砦をこの眼で見たいものだ。